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それはある夜のこと。 消灯時間をとうに過ぎたトレミーの自室の中でふと私は目を覚ました。 就寝前に食べたお菓子がいけなかったのか、妙に喉が乾いている。 ベッドサイドに置いてあるドリンクホルダーに手を伸ばすけれど、なんだか心持ち軽い。 そこでようやく飲み干してしまっていたことを思い出した、寝起きの脳はどうも調子が悪いみたい 仕方なしに、食堂にいくため部屋を出た。 トレミーのなかは薄ぼんやりとした明かりだけで、なんだか少しだけ気味が悪い。 元々そういう怪談だとかその手のものに弱い私は、思わず躊躇してしまうけれど こんなに喉が渇いたままじゃ、眠れそうにないというのも事実であって 宇宙なんだから、そんなことない平気!と言い聞かせて足を進めることにした。 いつもだったら誰かとすれ違ったりするのに、今日に限って人の気配がしなくて やだなあ、なんて1人ますます気が滅入ってしまう。 目指す食堂はもう目と鼻の先だと言うのに、 角を曲がれば、食堂の入り口が見える。 なんだか妙に長く感じた道のりの終わりにほっと息をつきながら、明るい食堂の光に誘われるように気持ちが焦った 早く飲み物を取って、部屋に戻ろう。 そう思いながら室内に視線を向ける 「…え?」 私の目に飛び込んできたのは、まあるい形の白いもの。 それはちいさくうずくまって、部屋の隅のほうでごそごそとなにか動いている、 まるく膨らんだ部分から下はひらひらとなにか布切れのようなものが伸びていて、 たとえるなら、そう 「おばけっ!」 全身からサアッと血の気が引いていくのが判る。 見慣れているはずの順路がなんだか迷路のように感じて、だんだん嫌な汗がでてしまう もう不安でたまらなくなって、次の角を曲がった直ぐのところにある部屋に飛び込んだ。 扉を開けた瞬間、足が縺れてべちゃっと床に転がった。 あいたたた、と呟きながら顔を上げれば刹那が少しだけ驚いた顔をして私を見下ろしていて、 これが他の誰でもない刹那の部屋だったからなおさら安心できる。 ようやく現実の世界に戻ってこれたような気がして、ホッとして思わずその身体にしがみつく。 「刹那ー!」 おばけ見ちゃったよ、どうしようもう1人で夜中に出歩けない! 部屋にも帰りたくない!一緒に寝て! わあわあとまくしたてるように矢継ぎ早に言葉が飛び出して、刹那が目をぱちぱちさせる。 俺より年上のくせして、そんなものを信じているのか。なんて呆れたように一言だけ言って、 私がこんなに怖がっていると言うのに、刹那は私の体を引っぺがしてさっさとベットに転がってしまった。 かといって自分の部屋に戻る勇気も出ず、刹那が寝ているベッドシーツに指を伸ばす。 「…怖いから一緒に寝てもい?」 「好きにすればいい」 「刹那のそういうとこ好き!」 すばやく体をベッドの中に滑り込ませてから、小さく息を吐く。 怖いから抱き締めてもいい?と両手に刹那の身体を閉じ込めてから言えば、 なにも返事は返ってこなかったけど、拒まれないという事は良しということなのだろう。 背丈は同じくらいだと言うのに、やっぱり何処か私より華奢に感じるのは歳のせいだろうか、 しばらくそうやっているうちに、少しずつ眠気が私を襲う。 腕の中の刹那はもう寝てしまったのか、小さな呼吸音が聞こえるだけだ 夢と現実のあいだをゆらゆらとさまよい始めた頃、俺の部屋でよかった と刹那の声がした気がした。 「刹那…?」 返事はない。 だけど抱きしめた体は妙にドキドキと脈打っている 愛おしくなって、首筋に小さく口付けた。 刹那の体温が少しだけ上がった気がした こんな思いをさせてくれるのなら、おばけも満更悪くないかもしれない。 例えば午前3時の誘惑 (昨日ハロがシーツ持って家出してさー) (…犯人はオマエか!) (2008.08.24 Alice) |