夜中の1時過ぎ。 今日は少し寝るのが遅くなっちゃったな と、髪を乾かすタオルの手を早める。 明日から大きなお仕事が始まると思ったら、なかなか寝付けなくて、本日2回目の入浴 あらかた髪が乾いたところで部屋着に腕を通し、はちみつ入りのホットレモンをマグカップに注ぎ込む。 しっかり体をあっためれば、自然と眠くなるものだって 昔お母さんが言ってたっけ サイドボードの上にマグカップをおいて、ベットに腰を下ろす。 まだ少し熱いマグカップの中身に2回息を吹きかけたところで、 訪問者を知らせる控えめなアラームが鳴った。 こんな時間に誰だろう。 不思議に思いながら『どなたですか』と一言。 帰ってきた言葉と声に マグカップを落としそうになってしまった 「よかった、もう寝てるかと思ってたから」 「ど、どうなされたんですか、 白蘭様」 自分が部屋着だってことも忘れて慌ててロックを解除して彼を迎えいれた。 扉の向こう側に居た白蘭様も、いつもとは違ってラフな装いで 胸がギュっとする 私の格好に気がついた彼は『無用心だねえ』と私に笑う。 それから私の髪をなでて、 「ねえ、今日僕もここで眠ってかまわないかな」 と、優しく囁いた。 ダイジョウブ なんにもしないから なんて付け加えて有無を言わさぬ笑顔で笑う。 ただでさえ私は白蘭様に弱い どうしようもなくて、小さく頷くと 彼は満足そうな表情をしてみせた。 彼と1センチも隙間なく接してる背中が熱い 閉じた視界のせいでやけにはっきり、胸の音が聞こえる。 この部屋にはない甘い香りが鼻腔をくすぐる度に、体の体温が上がっていく気がした 「ねえチャン」 そう言って、ふいにまわされる腕 耳にかかる はちみつとレモンの匂い 暖かいお布団の中で、やけにひんやりした手のひらの感触が素肌に触れる 不安なの? そう思ってバカだなあ私なんてすぐに取り消した。 別に理由なんてない、ただやけにつめたいこの人の温度が気になっただけで この人のことを何も知らないんだ私は それなのに、こんなに惹かれてる 憧れだと思い込んでいれば良かったのかもしれない 「明日は晴れるかなあ」 でも、 「晴れると いいですね」 冷たい指先を覆うように、そっと手で包み込む。 背中で彼が小さく笑った気がした それでも夜に沈む (2009.12.01 Alice) |