さっきから私の視線の先にいる人物は 私が数えてる限り30分はきっと同じ体勢だと思う。 飽きないのかな 疲れないのかな 息してるのかな …死んでないよね? 私に出来ることと言ったらそんなくだらないことを考えて一人で面白くなることくらいだ。 これがフランとかベルだったら 5分ともたずにちょっかいかけてるところだけれども なんせ相手が相手なだけに 怒らせでもしようもんなら 後が面倒くさいし。 仕方がないので大人しく、慎ましく、淑やかにこうやって椅子に腰掛けているのである 「だれが慎ましくて淑やかだとぉ?」 あ、生きてた。 私の独り言になんとも納得いかなそうな口調で低い声が飛んできた それでも体勢はそのまま 瞳も勿論私を捕らえてなんかいやしません。 スクアーロが私を放置するから、仕返しに無視してやったら今度は怒声が飛んできた。 なんて横暴なんでしょう こっちだって別に頼まれて居るわけじゃないけど。 背中を向けられてるからよく見える 艶のあるキレイな長髪。 女子として、完全に負けとるがな …キイイィ!! 私なんて毎日ヘアパックと、寝る前の流さないトリートメントを徹底してるのに 時々枝毛とかみつかるんだぞ! 人の気持ちを考えろ! ハゲハーゲ! 三回目のハゲを言おうとしたところで、 いつのまにやらスクアーロが私に影を作っていた。 見下ろされると、怖さ倍増です 目で殺せますね!隊長! そうして乱暴に隊服の襟首をつかまれて、力任せに引き寄せられた。 「ちったあ大人しくしてろやぁ なぁ」 「後で相手してやる。」 …ずるいずるい! なんてずるいんだうちの隊長は。 そういうことするキャラじゃないくせに、 いつもは『して』って言ってもしてくれないくせに! 考え付く悪態とは裏腹に熱くなってしまった頬が悔しくて、私は部屋を飛び出して めいいっぱい空気を吸い込み 叫んだ。 「ボスー 聞いてくださいよボスー!! スクアーロ隊長が私にキスしましたー!!」 「殺すぞテメェ!!!」 さあ走れ、愛しのマイプリンス (2009.12.04 Alice) |