慎重に 慎重に 小さな筆でクロームちゃんの小さな爪をそっと撫でる。 真っ白で細い 自分の足を長い睫毛が縁取った大きな瞳で クロームちゃんは見ていた 物珍しげに、 なんだかどこかすこしだけ嬉しそうに、恥ずかしそうに 「きっと似合うと思ってね、今日買ってきたの!」 私はクロームちゃんのそんな表情が嬉しくて、声を弾ませ 言う。 たまたま買出しに行ったときに通ったお店にかざってあった薄いブルーにパールが入ったネイル瓶 一目見て、きっと彼女に似合うって思ったら居ても立ってもいられなくて 京子ちゃんとハルちゃんの声も聞かずにお店に飛び込んでた。 私と目が合うと、クロームちゃんは途端に顔を真っ赤に染めた。 でも、この色すきじゃなかった? と私が聞いたら、小さく首を振って俯いた。 私とクロームちゃんのやりとりはいっつもこんな感じで、 でもこれで十分だった ささいな事で訪れる私を毎回部屋に入れてくれて、 大事な体の一部を預けてくれたり、こうやって私の話を聞いてくれる。 「はいっ、出来上がり」 そうしているうちに、彼女の小さな足の指が全てキレイなブルーに染まった。 ライトの光に反射してキラキラしてるさまが、クロームちゃんにすごく良く似合ってると思った 私の言葉に自分の足元に視線を戻した彼女も、キラキラ光るそれに目を奪われている様子だった。 「爪が伸びちゃったりしたら、また塗りなおしてあげるね」 クロームちゃんはただ うん、と小さく頷いた。 そのあと何かを続けようと彼女は小さく口を開きなおして そして結局何も言わずに閉じた。 私が首をかしげると、また頬を桃色に染めて 俯く。 「よく、にあって、るね」 「うん、よく似合ってる。クロームちゃんに」 「ち、ちがう」 「?」 そうして彼女は私の足の指、 に塗られている桜にパールが入ったネイルをゆっくり指差す。 「ちゃんに、すごく、よく、似合ってる」 びっくりした うっかり手に持ったままのネイル瓶を床に落っことしちゃうところだった。 その言葉にも、クロームちゃんの表情にも 顔が熱い 絶対私、今クロームちゃん以上に真っ赤だ。 ありがとう って、なんとか言葉を紡げた私に追い討ちをかけるみたいに、 彼女は 似合ってる とまたもう一度微笑んだ。 かわいい名前の病気 (2009.12.04 Alice) |