これでもかと言わんばかりにじりじり照らす太陽。
梅雨明けの晴れ上がった今日はいつにも増して気温が高い

両手に下げたビニール袋から伝わる冷気にほんの少しの安らぎを感じながら、
目的地の校門まで一歩、また一歩とのろのろ歩いていく。
運の悪いことに、いつも留めている裏門の駐車場がいっぱいだった為
少し遠くのコインパーキングに駐車する羽目になったところで、


「アイス溶けちゃわないかなあ」


チラリと目を落とした手元の袋の中身は差し入れのアイスクリーム。
みんな真っ黒になるくらい日中で練習をしているのだから、
きっと喜んでくれるだろう!なんて考え付いて実行したのはいいものの、
中身を空けてびっくり、液体になっちゃってました、なんて


「笑えないよねえ…」


そう言いながらもようやく雷門中の校門を通り抜ける。

そんな私の姿にまっさきに気がついたのは有人くんで、流石イトコと言った所だろうか。
なのにもかかわらず、有人くんは私を見るなりげんなりした顔をしたきり視線をよこさない。
薄情なやつめ、なんて内心毒づきながらあたりをきょろきょろ見渡せば
グラウンドのそこかしこに熱心に練習を重ねる皆の姿が目に入った。



そうしてようやく彼の姿を見付けるのだった。


思わず大きくなる声で彼の名前を呼ぶ。と同時に駆け出した。
視界の端で有人くんがため息をついたのが判った。失礼なやつだ。
名前を呼ばれた彼の近くに居た綱海くんがなんだか楽しそうににやにやしていて、
そうかと思えば、いつのまにか彼 立向居くんは私の目の前に立っていた

立向居くんは額ににじむ汗なんて気にするより早く、私の両手のビニール袋を浚って行く

なにか言いたげな表情で、でもなんて言えばいいのか判らない様子で
彼は眉毛をハの字に下げて、口をもごもごさせている。
そんな彼に私は思わずにんまり微笑んでしまった。 なんて可愛いんだろう!


「ありがとう、立向居くん!」


そう言えば、今度は私に背を向けて一目散にベンチの方へと駆けていってしまった。
去り際になにやらもごもご呟いていたけれどうまく聞き取れなくて、しょんぼりしてしまう
そうかと思えば、そんな私の所へお怒りモード全開の有人くんがゆっくりと近寄ってくる。

逃げよう、一瞬でそう判断したも時既に遅し。
背後には有人くんの有能な相棒、佐久間くんが腕組みをして立っていて、
そうして恐る恐る振り返れば、ゴーグル越しでも判る有人くんの鋭い眼差し。






「仮にも成人女性だということを忘れないでもらいたいものだ」

「うう・・・、すいません…」


マシンガンのような有人くんのお説教にみるみるうなだれていく私の頭。
そうしてようやく、その言葉を最後に自由の身として開放される私、

しょんぼりした心持のまま振り返れば、そこには彼が目をまん丸にして立っていて、
先程までの憂鬱な気持ちなんて何のことやら、嬉しさで思わず3度も瞬き。
自然と上がる口角につられて、目元までにんまりと笑うと立向居くんも小さく笑ってくれた。
嬉しくてついつい声が大きくなって、さっき自分が運んできたソレを発表すれば
一目散に駆け出す彼のチームメイト達。

あっ、と振り向いた立向居くんを呼び止めるみたいに、彼の頬の真横に隠し持っていたものの片割れを差し出して



「立向居くんは特別なのでー、はい!これ」



特別、の言葉に少しだけ気持ちをこめて伝わりますように、なんて!

おずおずと受け取った立向居くんは、彼特有のはにかんだ笑顔で私を見つめて、
ありがとうございます。と呟いて少しだけ俯いて、そんな彼に私はまたこっそりと笑った。




(2010.07.22 Alice)