酷い夢を見た。


思い出すのも恐ろしい位、ぞっとする夢だった。
目が覚めた時無機質な自室のベットが自分の脂汗でじっとりと湿っているのが判った。

なんて夢だろう、吐き気にも似た嫌悪感を抱えながらだるい体を持ち上げて立ち上がる。
いつもよりも寝足りない気がして時間を確認すれば、時刻はまだ夜明け前(どおりで足りない気がする訳だ)

かと言ってじっとりしたベットにまた腰を下ろして、瞼を閉じてあの悪夢に戻るのも気が引けたため 私はのろのろと部屋を出た。


いつも以上にしんと静まり返った城の中をぐるぐるする視界で歩き進める。 目的地はもうすぐそこだ。










「…アクセル」





暗い部屋の中を覗き込んで、控えめな声で部屋の主を呼んでみる
寝返りの音も聞こえなかったので、しっかり眠り込んでいるのだろうとがっくり肩を落とした私を、と掠れた声が呼んだ。

顔を上げると、扉に背を向けるように眠っていたアクセルがこちらに向き直っている。
暗がりでもぼんやりと判る、その赤い髪と翡翠色の瞳にほっと胸をなでおろす
まだ夢の余韻が抜けたわけでもなくて、眠たそうに目を細めてるアクセルの顔を見るだけで胸の奥からなにかが溢れそうな気持ちになる
(私だってノーバディなのに、感情がないはずなのに そんな風に思うこと自体おかしいのだけど)



「なんだよ、どうした…こんな時間に」



アクセルが優しい声でそう言う。 私が泣けるのであれば、きっと今堰を切ったように泣くのだろう。
嫌な夢を見たの、ほんとうに恐ろしくて、思い出すのも嫌なのだけど、余韻が抜けなくて、不安で
一言一言を区切りながら説明すればアクセルは子供にするみたいに私を抱き寄せて頭を撫でた。

アクセルはあったかい。
文字通り体温だってどちらかというと高めで、包んでくれるような優しさを持っている
アクセルといると嬉しい気がするし、楽しい気もする、アクセルといると自然といつでも笑顔になれた。
心がある者たちに言わせれば、私はきっとアクセルを『好き』なの、だろう。(だろう、としか判らない だって私はノーバディだから)




「あのね、えっと…その 朝まで一緒に居てもいい?」


アクセルにしがみついたままでぼそぼそとそう呟いた。
別に構わない、と言ってくれたアクセルの言葉をありがたく受け取って私はそんな彼の隣で朝までもう一眠りすることに決めた。

アクセルの体温と、彼の匂いにすぐさま残っていた睡魔が顔をだしあっという間に私はまた夢の住人と化していく

後でサイクスに叱られねーかなあ…なんてつぶやくアクセルの言葉でさえ子守唄のようで、
私が見た悪夢も夢で、でもこうやってアクセルといる時間もまるで夢みたいに不安定で、それでも傍に居たいと思ってしまうのは




(2012.08.15 Alice)