また、だ。


大事に大事にとっておいたシュークリームは、空っぽになったプラスティックの容器だけを残して
冷蔵庫の奥から綺麗さっぱりとその姿を消していて、
楽しみに心弾ませていた私の気持ちは一気にまっさかさまに哀しくなってしまう。

もうこれで何度目の悲劇になるだろう。
攫われるのはきまって私のお楽しみだけで、他の人から不幸がられるのも最近慣れつつあって
それでもやっぱり、この瞬間のがっかりした気持ちといったら他にはない。





「わりと高かったのに、このシュークリーム…」


私の心からの本音は空の容器と一緒にぐしゃぐしゃしてごみ箱にポイ
はあ、と小さく溜息をひとつつくと どこから現れたのか良太郎が「また?」としょんぼりした声をかける。
ふとみればその口元にはきっと甘くてとろけるお味のカスタードクリームと思わしきモノ

(もちろん、良太郎が盗み食い犯じゃないって事くらいは判ってるけど)


「良太郎、クリームついてる」
「え、あ」


返事を待たずに私はそのクリームを人差し指の先で掬い取って、ぺろりとしたで舐める
ああ、やっぱり甘くてとろける至福の味

そうしてまるでごく自然のような顔をして良太郎の口に自分の唇を重ねる。
途端に頬を赤くしてしどろもどろする良太郎を見て私はにんまりと笑った

そんなことするから怒ってるんじゃ…なんて言い淀む良太郎を無視して私はもう一度キスをした




これは今まで誘拐されていったデザートたちの最も有効的な敵討ち。

きっと明日はもっと悲惨な誘拐事件が起こることは目に見えているけれども




お菓子と


悪戯に


踊らされる彼女


(2010.12.17 Alice)