けんま、けんま!って今日もまた嬉しそうに声を弾ませてがおれの所に走って来る。
はなんていうか、ちょっと変な人だなあと思ってる。別に、嫌いとかそういう意味ではないけど。




「おはよう!研磨」

「…おはよう、御座います。」

「なんでそんな他人行儀なのー」



何がそんなに嬉しいのか、ニコニコしながらいつものようにその両手でおれを捕まえて、ぺたりと身体を寄せる。
初めの頃こそぎょっとしたものの、もうすっかり慣れっ子になってしまったのもあって、そんなを腰に巻き付けたまま体育館へ足を進めた。


「皆に見られたら五月蠅いから、そろそろ離れて。クロにも叱られるよ」
「やだやだ、研磨から離れたくない」


そう言っては巻き付けた腕に力を加える。
クロの名前を出せば大抵おとなしくなって言う事を聞くのに、今日は随分とわがままだ。 珍しい。
仕方がないのでその場で立ち止まって、静かになってしまったその人を振り返る。
その瞬間にふわりといい匂いがして、なんだか急になんとも言えない恥ずかしさみたいなものが足元から這い上がってくる(あんまり好きじゃない感覚)


「研磨」


俯いた瞬間に覗き込むようにするの瞳がおれの視線を捉えて、少しだけ動揺する。
だって、なんか今日は寂しい気分なんだもの と、彼女はそう呟やいたかと思うとあっさりと拘束する両手を解放した。
そうして今度はおれの右手を掴んで歩き始める。


は割とスキンシップが好きなタイプで誰にでも構いたがる性質なのだけれど、
ここまでするのは自分に対してだけだということは、なんとなく知っている。
ベタベタされるのとか本来ならあまり好まない感じなんだけど、嫌な気持ちにさせないからすごく不思議になったりする
前を歩く自分より少し小さいその人にされるがままになりながら、ノロノロと歩みを進めつつぼんやりそんな事を考えた。

好きか、嫌いか。 と、聞かれたら好きなのかもしれない。…どちらかといえば。
他人と関わり合いなんて、と思いながらの事はどうしてか放っておけないし、ベタベタされて嫌な気はしないし、
それにたまにがおれの知らない誰かと楽しそうに話しているのを見掛けるとなんかすごくもやっとした気持ちになるし。


……ああ、いやだな、もしかしてこれって恋ってやつなんじゃないのかな。

なんて、漠然と考えてウンザリした。









(2013.06.18 Alice)