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「名前ちゃんお風呂どうぞー」
しろくんがふわふわの猫っ毛をタオルで拭きながらそう私を呼ぶ。
リビングのソファーに寝転んで一緒にテレビを見ていたあつくんは不満そうに口を尖らせる。
一番風呂は俺だって言ってあんだろ、なんて抗議の声もしろくんはなんのその、
「兄ちゃん聞ーてないだろ…」
「早いもの勝ちなんでしょー、アツヤもよく言うじゃない。」
しろくんに何事もなかったかのようにそう切り返され、
あつくんはぐっと苦虫を噛み潰したような声を漏らして押し黙る。
ちぇっ、とバツが悪そうにそっぽを向いてしまったあつくんをよそに、
しろくんは冷蔵庫から今日私が買ってきておいたアイスクリームを取り出してパクリ。
「駄目だよーあつくん、アイスはお風呂に入った子だけです。」
横目でじとりとそんなしろくんを睨んでいたあつくんにここぞとばかりに釘をさす。
いつもいつもフライングして一人だけ先に食べてしまっては、
毎回私に一口よこせと強請ってくるのだから。
そういうとあつくんはますますヘソを曲げたらしくてこちらに背を向けごろりと転がった。
お風呂入らないで寝ちゃうなんてアツヤばっちいー、なんてしろくんが口を尖らせる
「あつくん入らないならお姉ちゃん先入っちゃうからねー」
そんな私の言葉にももちろん返事はナシ。
かと思ったら勢いよくむくりと起き上がるあつくん。
「一緒に入る」
その発言に目をまん丸にしたのは私だけじゃなく。
何か言おうと考える私より早く、後ろでアイスを食べ終わろうとしてたしろくんが飛んできた。
珍しく、むっと顔をしかめている
「アツヤずるい!僕だって」
「早い者勝ちー」
「え、本気?!」
自分の思いつきにとたんにご機嫌が宜しくなった様で、
あつくんは口角をつりあげにんまりと笑いながら私の手を握って足早に歩いていく。
めげずに抗議の声をあげてるしろくんなんてなんのその、バタンと閉めた脱衣所の扉の向こうにかき消されてしまった。
「なに照れてんの?今更じゃん。昔から一緒に入ってたのに」
悪戯でも思いついたかのような顔でこちらをみるあつくんが小悪魔に見えます拝啓母上様。
(2010.07.22 Alice)