![]() 『お前 未だにあの夢見野郎の影を引き摺ってんのか』 そう言ったのは、確かにみぃちゃんの声だったと思う。 それに対して激しく声を荒げているのはきっと冥ちゃんの声だ … あ の 人 あの人って、誰のことだっけ? 強豪校の野球部だというのに、この華武校野球部には私以外のマネージャーは存在しない。 何故かと聞かれても、わたしも判らない。 なんでだろう? 一通り清潔なタオルとドリンクをベンチまで運び終えたので レギュラー陣と合流し様と中庭を通り越えたところで言い争うような声が聞こえた。 ここで飛び出していったって、火に油を注ぐだけだって思ったから 校舎の陰に隠れてじっと耳を済ませてた。 生憎ながら位置が遠く、言葉の所々が良く聞こえない それでもはっきり聞こえたみぃちゃんの声が発したワードが心にひっかかる どれ位そうしていたのか、辺りが静かになった頃突然私の耳元にふっと息を吹きかけられる。 なんとも言いがたい悲鳴をあげたら息をかけた張本人がなんとも楽しそうにゲラゲラ笑うので じとりと睨みながら振り返れば、そこに居たのは案の定みぃちゃんだった。 「んなとこに居たのかよ、なにしてんだ」 「みぃちゃんとは違って真面目にお仕事をしていました」 「こんなとこで道草食って、真面目に?」 みぃちゃんは私の顔を覗き込んでにやにや笑う。 そうして彼はなんでもないことのように、いつもそうするように私の顎を少しだけ上に上げる 「…まさか、ちゅーするために探してた、んじゃないよね」 「んー半分当たりで、半分ハズレ」 もうすぐ試合、始まるし? |