「で、ホームラン打って帰って来た4番様にかける言葉は?」





くるくる回してたヘルメットをその辺に放り投げて、ぼんやりしてるの隣りに腰を下ろす。
先程まで粋がってた十二支、もとい犬飼の空気の一掃されっぷリたらない
でぽかんと口をあけて先程のホームランを見ていたのを俺は知っていた。

それはそれは大好きな『冥ちゃん』が打たれてさぞ哀しいかもしれませんが?


「だから、お前は俺のマネージャーだろ って」

そう言って両頬をいーって引き伸ばしたら、ようやくこちらに視線を向けた。
みぃちゃん専属になった覚えなんてありません、とか言いながら『よく出来ました』って俺の頭を撫でる。


「あっれ意外。 ぷりぷり怒んのかと思ったのに」

「だってみぃちゃん本気で打ちにいってたもんねー」
「あ?  んなこというのはこの口か」

「いっ、いひゃいいひゃい!」



だって滅多にださないじゃん、アレ ってそう言われてなんとなく答えづらくて
べつに、なんてその言葉に生返事返して今度は彼女の体を抱えて自分の足の間に座らせる。
そして両手を掴んで、今まさに、 ベンチで撃沈しているアイツに向けてにやにやしながらの手を振ってやった。

バッターボックスで次の打者が頑張ってるとかそういうことはどうでも良くて
俺はただひたすらにアイツが不愉快な気持ちになっていけばいいとただそれしか考えない


「もー離して冥ちゃん怒ってるよ?」
「いーんだよ、怒らせてんだから」


なんでそんなことするの、ってまだ反論するがこちらを振り向いた瞬間にまた口付けてやった。
今度はベロチュー   むうっ、ってちょっと色っぽい声が近くにいた先輩に聞こえたけどまあ勘弁してやろう





「御柳、テメェッ…!!」



口の動きと、思わず立ち上がった犬飼の行動と、それを嗜める辰羅川の表情でなんとなく感情が読める。

残念でした、 お前の大事なちゃんにはしっかり俺の"ツバ"がついていまーす。




(2010.10.30 Alice)