![]() 「めーいちゃん」 自棄酒だなんだと騒がしいチームメイトの一番後ろをのろのろ歩いていたら、背中から聞き覚えのある高い声。 女子特有のそれと、なにより親しい事を表すその呼び名にその場にいた全員 勿論俺を含め、が勢いよく振り返った。 案の定そこにあったのは薄ピンクの傘をクルクル回す幼馴染、の姿だった。 俺と目が合うなり、冥ちゃん!とまた嬉しそうに声をあげてそいつは勢いよく飛びついてきた 「え、ちょ、オマ、コゲ犬!誰だその美少女Aは!!」 「華武の制服? え、どういうことっすか犬飼君」 「犬飼くんって他校にもファンいるの〜?あなどれないな〜」 「まあまあ、皆さん事情はあとで私からお話致しますので一先ずここは野暮という事で」 自分が置かれている状況と、腰に巻きついていると なんと説明するべきか言いよどんでいた所に なんとも有難く辰が好奇心の目で見る全員の背を押して華武の校門をくぐって行って見えなくなった。 「会うのはちょっと久しぶりだねー」 「と、とりあえず、離れろ、 濡れる」 そう言いながら彼女の足元に転がった傘を指差してやると、は一瞬目をまん丸にした後 『ごめんごめん』とへらりと笑ってみせる。 肩に乗った水滴をぱたぱたと払いながらは俺を見てにこにこ笑う。 「今日はお疲れ様、いい試合だったあ」 「…アイツに打たれたけどな」 アイツ、と目を細めるだけでは眉を下げて申し訳なさそうに口をへの字にまげる。 ご、ごめんね、みぃちゃんが色々… そう言われて思い出すのは、先の試合中グラウンドで見せつけられたあの行為 わざとこちらを挑発するようなあの、顔。 思い出すだけで殺意にも似た気持ちが湧き上がってくるのが判る。 どこまで侮辱すれば気が済むんだ、俺を、 あの人を 「冥ちゃん?」 不安そうな顔で俺を覗き込む。 この人には、 幸せでいて欲しいと心から思うのに |