![]() 「あれ〜? 犬飼君、あれって犬飼君の幼馴染の子じゃないの〜?」 部活終わり、もうすっかりあたりも真っ暗になった時間、先を歩いていた兎丸が大きな声をあげる。 それに反応するようにその方向へと目を向ければ、校門の入り口で壁に寄りかかってる見慣れた姿が見え、 声を掛ける俺よりも先に、辰が彼女の名前を呼べば彼女は嬉しそうな笑みを浮かべて顔を上げた。 「あのね、ちょっと冥ちゃんにお話がありまして」 そう折り入って頭を下げられた辰は嫌な顔一つせず、一足先に帰路へとついたのが5分前。 すっかり辺りには誰もいなくなったそこでは靴が砂利を踏む音すらもよく響いて、 マフラーを巻きなおしながら鼻をすするを気にして俺は先に歩き出した。 「アイツになんかされたのか」 「え?あ、ううん、そう言うのじゃなくって」 アイツと呼ぶとは照れたようなはにかんだような表情を浮かべる。 みぃちゃんは割といつもどおりなんだけど、ね と言葉を続けた彼女は少しだけ困った顔。 「あのねえ、こないだみぃちゃんに『どうして冥ちゃんに意地悪するの?』って聞いたんだけど答えてくれなくて。」 それでふと思ったんだけど、 どうして『冥ちゃんとみぃちゃんの仲ってどうして悪くなったんだっけ?』 彼女は笑顔を崩すでもなく、ただ平然と 心に浮かんだ疑問を口にした という感じで 『 どうしてか、なんて そんなの決まってる 』脳裏に浮かぶのはただ一つの出来事。 でも、まだこいつには話してはいけないことなのだと額に浮かぶ脂汗が警告する どういう思いではぐらかしているのか知りたくもないが、御柳がごまかしたのを理解できない訳でもない。 「テメーコゲ犬、負け投手の癖に女連れとはいい度胸してんじゃねーか」 ぐっと押し黙ってしまった自分にが不思議そうな顔で何度か瞬きをして、 冥ちゃん、ともう一度俺の名前を呼び終わるか否かのタイミングで耳に煩い声が校舎の方から飛んできた。 その声にわあとは驚いてそちらを見遣る。 同じくゆっくりと視線を彼女と同じ方向に向ければ やはりそこに立っていたのはバカ猿 もとい、猿野天国 だった。 |