「ねえねえ屑桐さん、私十二支のおうえ…じゃなかった偵察にいきたいですー」
「俺もまじこの試合つまんねーし帰っていいっすかー」

「研究を怠るな、次にあたる高校だ」


屑桐さんのごもっともなお言葉に一喝されてしまった俺とは2人してがっくりうなだれる。
甲子園目指して大会に出てる同じ高校球児だなんて到底思いたくない試合相手に反吐が出る
は携帯で見られる大会予選の情報をそわそわと気にして落ち着かない様子だ。
俺は俺でその様子が面白くなくて、ぱたぱた扇いでた下敷きを椅子においてのろりと立ち上がる




「ガムでも買ってくるか…」
「みぃちゃん行くなら私もいく!」




あまりの暑さに溜息すら零れる。
立ち上がった俺を見てさっきまで携帯に釘付けだったが徐に顔を上げて慌てて立ち上がった。
そしてぺたりと俺にひっついて、の逆隣りに座ってた久芒センパイに手を振った











「あつい、くっつくな」
「普段はみぃちゃんからべたべたしてくるくせにー」
「今は別だ、 あーマジあちぃ だるい、帰りてー…」


現金だなんだと口を尖らせるを他所に涼しい売店内へと足を踏み入れる。
店内に入るなりアレ買って、コレ買って、とが次々に物を持ってくるので
300円以内までな、とぴしゃりと言うと飼い主に見放されたような犬みたいな顔で項垂れた。
そうして手にしてた沢山のお菓子やらなんやらをしぶしぶ棚に戻していく







「みぃちゃんありがとー」
「はいはい、どーいたしまして」

今しがた買ったばかりのアイスの袋を開けながらが満足そうに笑う。
ああ、また朱牡丹センパイに面倒くさく絡まれる気がする…
すこし汗ばんだ腕に下げられたビニール袋がガサガサと騒がしく音緒立てるが
それに負けず劣らずの蝉の声が耳に煩く、ますます俺のだるさが募る。


「ねえみぃちゃん」
「あ?」

「帰ったらクーラー効いた部屋でお昼寝しよーねー」
「……あー」






それはまあ、"お誘い"ってことでオッケーなんですよね さん?




(2010.10.30 Alice)