「すごーい! ボールが止まって見えたよ!   ちゃん」






「すっげーだろ? この投球の名前は…」









名前は…




なまえ……










「ひ   りゅ う …? 」








それまでほんの一言も発さずに犬飼の投球を見ていたが 突然堰を切ったように泣き崩れた。

その瞬間『ああ、終わったのだ』 とあっさり諦めを決めた自分が居ることに俺は少しだけ驚いて
それからすぐの豹変振りに驚いたセンパイ達に彼女をお願いし、俺は逃げるように球場を飛び出した。








「ねえそんなに野球って面白いの?」






「おまえにも絶対いつかわかる日が来るって 野球のよさのな」











「  ちゃん、その子たちだあれ?」




「無愛想なのが犬飼、生意気なのが御柳、優等生ぼっちゃんなのが辰羅川ってんだけど、野球教えてやってるガキどもだ」

















「ねえ   ちゃん、私、甲子園に 行ってみたいなあ」


「誰に行ってんだ? 俺はお前の アニキ だろ?」















「お兄ちゃん! お兄ちゃん!!」



「うそ、お兄ちゃんが死んだなんて、 嘘、だよね」



「ねえ、たっつん、 冥ちゃん」






「みいちゃん  嘘、だよね? いつもみたいな冗談、だよね?」











「…俺が、俺がお前を守るから お前の願い 叶えてやるから」





だから





















「あ、あああ、あ      わたし、 なんで、 忘れて」


こんな、大事な こと








冥ちゃんが放ったボールの持ち主も、
みぃちゃんと冥ちゃんの仲が悪くなってしまった理由も、

私の苗字が  大神   だ、っていうことも



























「ああぁあああああああああああああああ!!!!!!!!!!」





















(2010.10.30 Alice)