![]() 「ど、どうした、こんな時間に」 玄関の扉を開けると驚いた様子の冥ちゃんが其処に立っていて、 私は安堵とか心配させられた怒りとかいろんな思いが溢れて一気に涙が溢れ出した。 冥ちゃんのバカタレー! そう言っておもいっきりタックルすると主人の危機を察したのか 後ろでトリアエズがキャインキャインと吠え立てている。 「その、とりあえず、心配させたみたいで悪かった」 「ほんとだよーもーあんなメール急に寄越されてそれ以降ぷっつり音信普通なんて、どうしようかと思った」 あの後とりあえず部屋に、と中に通された私は かれこれ数日間の空白の時間を説明してもらっていたわけで。 無人島に野球の特訓て……… 十二支はスケールが違うなあとか尊敬と言うか呆れと言うか…。 私にこってりと叱られた冥ちゃんはしゅんと項垂れた子犬みたいな顔ですまん と呟く。 「いいよーもう、ちゃんと無事に帰ってきたし」 それに、びっくりするくらいパワーアップもしてきちゃったみたいだし?3回戦突破おめでとう! とにんまりして冥ちゃんに問い掛ければ、彼も少しだけ嬉しそうに笑った。 「冥ちゃん、次の試合も 勝ってね」 「とりあえず、…誰に言ってる」 「そういうとこはやっぱりみぃちゃんとそっくりー」 「あんなのと一緒にするな頭痛がする…」 頭を抱えて溜息を付いた冥ちゃんを見て自然と笑みが零れる。 ほら言おう、ちゃんと 言わなくちゃ 「冥ちゃん 今日来たのは、それだけじゃないの」 「どうした?」 急に畏まった私に冥ちゃんが不思議そうな顔をする。 ちゃんとここに来る前、家で練習してきたはずなのに いざ目の前にすると言葉が出てこなくて 泣き出したい気持ちを一生懸命堪えて、 頑張って笑顔を作って見せる。 「あのね、 お兄ちゃんのこと 思い出したの」 冥ちゃんの飛竜見られて、全部思い出せたんだよ、 と其処まで言ったら一気に涙腺のたかが緩んで、私は思わず泣き出してしまった。 視界が滲んで、冥ちゃんがどんな顔をしているのか判らなくて不安になって だけど、次から次に涙は止まってくれなくて 服の袖で拭おうと右手を上げた瞬間 力強く身体を引き寄せられた。 「め、冥、 ちゃん」 「…わるい」 「な、なんで冥ちゃんが謝るの、」 「ホントに、ごめん 」 余裕のない声、 きっと冥ちゃんも泣いてるんだろうってすぐに思った。 私の体を抱え込む腕がかたかたと頼りなく震えていたから |